一文字(松本奉巳)切れ波止(越智義則)ソロバン(上田 敬、 西村 文夫)
 新波止(熊懐 弘毅)テトラ(西島 祥一)前打ち(鳥喰 真悟)
博多沖防「前打ち」による釣り方
鳥喰 真悟
           
 13年前迄、名古屋港で前打ちばかりしていたのですが、ひょんなことから福岡へ移り住む事になったので、当然沖防がホ−ムグランドとなりました。名古屋の前打ちを名古屋釣法などと云う人がいますがこれはマチガイです。本当の名古屋釣法とは、1本の目印を駆使して、ヘチも前も底も宙も自在にこなす釣法の事をいいます。当会では西島氏の釣り方が、完成度の高い名古屋釣法の基本形です。そして、沖防へ通い始めて10年経ちましたが、昔のままの釣り方では、労力の割には釣果が少ない事に気がつきました。数釣っても、たまに良型が出ても、今イチ納得が行かない時もありました。
沖防でシ−ズンをコンスタントに前打ちだけで攻めるには‥‥‥「前打ちの原点は何か。釣り方の基本は?」今迄のデ−タをもう一度見直して、ここ数年、「沖防の前打ちの完成」に向けて取り組んできた事をご紹介します。

●博多沖防の前打ち
前打ちとは障害物を釣る事だ。しかし釣れる障害物と釣れない障害物があるので、釣れる障害物(この場合捨て石)を見分けられるようにならないと前打ちは語れない。広い沖防のポイントの中ではテトラの内側が、捨て石の入り方やカケ上がりが、他のポイントよりも変化に富んでいて前打ち向きである。沖防に限っては自分の中では外側のテトラは前打ち釣り場ではない。
大事な点は多々良川の浅瀬で暖められた河水が、下げ潮時は切れ波止沿いを流れるほか、貯木場と切れ波止との水道を通り、一文字の先端の沖をかすめて、新波止の曲がり付近に到達する。そして角テトラの内側は、そのまま左から右への流れになる。だが、ここはこの流れではアタらず、上げ潮の時に逆の右から左への流れで良く釣れるのである。これは塩分濃度の変化が頻繁に起きる下げ潮よりも河水の影響が幾分でも少ない上げ潮の方が、カラス他着生物達の動きも活発化する為と思われる。勿論、他にも様々な要因が考えられるので、現在も研究を続行している。

●ここでの他の大事な事柄
@カラスは波止の外側よりも早い時期から付き始め、早期から期待がもてる。A普段見過ごされがちなポイントで人が少ない。(内側の浅瀬ということで)B雨水ほか、濁りが入りやすい。
C北東の風向きが良い。
Dヘチは浅いがすぐ沖が航路になっている。

●不利な事柄
@前日に夜釣り組がお楽しみ後の朝マズメは期待薄。
A船舶の往来が激しいときがある。
Bテトラ組、サビキ組の水汲み場と化す事がある。
C西寄りの風向きは釣りづらい上に二枚潮になる。
D大雨の直後はゴミ等浮遊物に悩まされる。

☆技術的な事柄について
 波止と平行にできる白い泡を目安に、その泡帯中の延長線上にある、普段からアタリの多い捨て石を拾って釣り歩く。更にその捨て石の中でも濁りの入っている場所の石のみを釣る。
 この濁りは時間の無駄を省く為、急ぎ足で捜し回る事もあるが、その時は竿を入れなくても良いと思うくらいだ。 普段の釣りスタイルは、濁りの中のチヌの付くであろう捨て石へ、一発必中の正確にコントロールされた打ち込みを心掛けている。そして、乗船前に風向きが解ったところで最近の釣況を船長に聞き、濁りを追いかけ、魚の付く障害物を潰しながら手返し勝負で釣り歩いて行く。ただ単に「手数と足数」というが結局私の場合手数と言うのは魚の付く障害物を潰して行くことであり、足数と言うのは濁りを追いかけることである。
 
 チヌが無警戒で食うポイントに一発でエサを投入出来たなら、カニ飛ばしの技すらも必要ない。カニ飛ばしの技にはむしろ弊害がある。それは潮が動かない時や、波止の先端に辿り着いてからこの動作に没頭してしまうと、つい足が止まってムダに粘ってしまう。ポイント的には爆発力のある先端も、前打ちの技術力アップにはつながらない。先端には、また違った楽しさや攻め方がある。
 
 竿の操作は、風を利用して道糸に軽くテンションをかけたまま、その軌道をノの字にしながらも穂先でアタリを取る。この動作の中で最も集中する所は、着低後の餌を道糸を張って聞いた時ではない。逆に張らずに着低後そのまま、流れに押されて道糸が膨らみかけていくのを見届ける。これが膨らみかけていかずそのままだったり、道糸のノの字の曲がりが消えていくようであれば、アタリか根がかりか?の確率だ。 

 道糸を張っていないとアタリが判らないとか、着低後そのままにしておいたら根がかりするとかの悩みは、沖防でひとシーズンでよいから、岩ガニのみを使い、毎週地道に底取りの練習をすれば解決できる。
 その際、ガン玉は1号が基準だ。そのガン玉に対する考え方もヘチ釣りとは全く違う。ワンランク重さが違えばアタリの出方が変わるヘチ釣りとは違って、前打ちでは狙ったポイントに正確に入れる事が出来る重さのオモリを使う事が重要だ。食い込みの良さを追求するのは二の次だ。
 ポイントに入れる事が出来るなら食い込みの点でも軽いオモリの方が有利と云うことが言えるが、横風時などは思い切って2B程度を1p間隔で5個位付ける事もある。そんな荒れた天気の日や遠投を必要とするポイントでのアタリは大きく出るので心配ない。
 くどいようだが、あくまでも狙った場所へ、餌を送り届ける事を一番重要視する。「アタリを出やすくする為に」「楽に底取りをする為に」オモリを使い分けるのではない。
 そして餌のカニは元気の良いものを使う事。直径20pのオケなら20匹が限度だ。発砲系やプラスチック製の餌箱なら、10匹以下しか入いらない。カニ餌の前打ちにとって、その鮮度はヘチ釣りよりも気を使う。余談だが、私はオケのフタの裏に「気合い!」と書いているが、これはエサを投入する時に「頑張ってこいよ!」とカニ等エサ達に対する激励の言葉である。
 
 最後に糸フケを作っていても単なる根がかりと、チヌに脅えるカニのしがみつきとの差が判るようになれば、究極の前打ちの完成だ。が、地方へ遠征すると、このあたりがよくピンボケぎみになり、期待の割には成績が良くない。
 とりあえず沖防に関しては「この辺に落としてみよう」ではなくて「ここだ!」という落とし方をすれば、より良いアタリが拾えるものと信じている。

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